私にとって、秋の花と言えばコスモスです。そのコスモスが境内に咲き乱れ、ここを訪れた人に和みを与えてくれるお寺、それが奈良市街にある般若寺です。
大阪や神戸からも近いので、この季節には多くの人が訪れます。
秋はコスモスが見事なのですが、春にはサクラやレンギョウ、夏にはアジサイ、冬にはスイセンなどが美しく、花のお寺としても知られています。
このお寺、四季の花以外にも、見どころのあるお寺です。
まず仏像群、ご本尊は後醍醐天皇の念持仏であったとされる八髻(はっけい)文珠菩薩。これは国の重要文化財です。他にも、不動明王、弘法大師、四天王、そしてここのお寺と関係の深い興正菩薩(叡尊上人)像などがあります。
あと、歴史好きな方からすると、平重衡(たいらのしげひら)や大塔宮(おうとうのみや)に縁のある場所です。
平重衡は平清盛の五男で、平安時代末期、平家の抵抗勢力となっていた東大寺や興福寺を、焼き討ちにした人物です。このあたり(般若寺)で火を放ったことが原因でした。南都焼討と呼ばれています。重衡は最終的に源氏に捉えられ、南都衆徒に引き渡され、凄惨な方法で処刑されてしまいます。この重衡の供養石がこのお寺にあります。
時代は150年ほど下り、鎌倉時代末期、後醍醐天皇が一時的に武士勢力から政権を奪取し、天皇中心の政治を始めました。建武の新政です。大塔宮は後醍醐天皇の皇子の一人で、倒幕の中心を担った重要人物です。南都で倒幕活動を行っていた皇子が、幕府軍に追われ窮地に陥った際、この般若寺でかくまわれた、と言います。その時、お経を入れる容れ物(唐櫃(からびつ)と呼ばれる)の中に入り、その上からお経を重ね入れたとか、その容れ物(唐櫃)がお寺に残されています。
境内東側には、国宝の楼門があります。サイズは普通程度ですが、その姿が美しいです。
コスモスの季節は圧巻ですが、それ以外の季節でも様々な花を見ることができ、何かと見どころの多いお寺です。観光で奈良市を訪れた際には、北の方面に少し足を延ばしてみませんか。
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