仏像の並べ方(5) ~不動明王と五大明王~

不動明王は大日如来の化身であり、煩悩を断ちきる力強い仏様です。また、真剣に向き合えば様々な願いが叶うとされることから、この仏様を信仰する人はとても多くいます。

不動明王像は作例がきわめて多く、単独で安置されているお寺が多いのですが、以下の四つの明王と共に、五大明王として安置されている場合も珍しくありません。

四つの明王が、不動明王を取り囲む際、普通、以下のような配置となります(天台宗では、金剛夜叉明王の代わりに、に烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)となります)。

金剛夜叉明王(北)           降三世明王(東

不動明王

大威徳明王(西)            軍荼利明王(南)

また、横一列に並べられる場合は、以下のようになることがほとんどです。

金剛夜叉明王 大威徳明王 不動明王 軍荼利明王 降三世明王

降三世明王(ごうざんせみょうおう)

軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)

大威徳明王(だいいとくみょうおう)

金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)

面の数臂の数方角特徴
降三世明王
軍荼利明王
大威徳明王6臂6足西
金剛夜叉明王

覚える時は、石高(こくだか)と覚えましょう。
うざんぜの「ごう」は「降」なので、「こ」と読み替える。
んだりの「ぐ」を「く」と読み替える。
いいとくの「だ」
を「かね」と読み、「か」とする。

近畿三十六不動尊巡礼のほとんどのお寺で、五大明王は見ることができるのではないかと思います。

代表的なお寺を四つほど紹介したいと思います。

まず、醍醐寺(京都市伏見区)。豊臣秀吉が桜見をしたお寺として有名ですが、今でもしだれ桜が見事で春には多くの人が訪れます。広い境内を有していますが、霊宝館の仏像群が数、質とも実に充実しています。五大明王はここに収められています(なお、ここに収めてある文化財の多くが、廃仏毀釈や戦争時には関係寺院に逃避させたということを聞いています)。

醍醐寺入口
醍醐寺のしだれ桜

次に大覚寺(京都市右京区)。嵯峨天皇の旧御所にあたるため、境内は広く様々な建物があります。本堂(五大堂)で立派な五大明王を見ることができます。

大覚寺前の石碑

三番目は、車の安全祈祷で知られる成田山不動尊(大阪府寝屋川市)です。五大明王はこのお寺の本堂に祀られています。ここの五大明王はさほど有名ではありませんが、私はとても気に入っています。と言いますのもどの明王様も間近でみることができるからです。

成田山不動尊 大師堂

最後に、ここは一番有名かもしれません。東寺(教王護国寺)です。五大明王は講堂にある二十一体の仏像からなる立体曼荼羅の一部を構成しています。

東寺の南大門の西側から

迫力ある五体の明王様。今週末はこれらのお寺でその迫力に圧倒されてみませんか。

仏像
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