東大寺にある大仏様を見たことのある人は多いかと思います。大仏様が収められてある所は、大仏殿と呼ばれます。
しかし、東大寺の境内はたいへん広く、様々な塔頭があることでも知られています。
二月堂は、まさしく二月に行われる有名な行事「お水取り」で知られる所です。
その他にも南大門の金剛力士像。鎌倉時代の天才仏師、運慶と快慶を中心とした慶派仏師による歴史的な仏像です。
二月堂も南大門も、比較的よく知られた所ですが、大仏殿の西側200mぐらいにある戒壇院を知る人はあまりいないように思います。
しかしながら、この戒壇院は歴史的には重要な場所です。と、言いますのも、ここは、仏教の僧侶資格を与えることができた場所だからです。
奈良時代の仏教は、基本的に寺から外へ出て民衆に布教することが禁止されていました。また、僧侶であることを証明する資格もなかったために、重税から逃れるため、自称僧侶(私度僧と呼ばれる)と名乗ることが多い時代でした。
そんな状況を憂いた聖武天皇と光明皇后は、僧侶資格を与えるための制度を整えるために、中国から仏教の超大物を招聘することを決意します。
この超大物とは、皆さんも耳にしたことのあるのではないでしょうか。鑑真です。鑑真は、日本の仏教発展のため、度重なる渡航の失敗を乗り越え(この間に失明を経験、そして弟子からの阻止を振り切って)、来日を果たしました(日本にきていただきました)。
※このあたりは、井上靖の小説『天平の甍(いらか)』にも、よくあらわされています。
鑑真は、来日を果たした後、僧侶資格を与える所を三つ作ります。
筑紫国の観音寺(現福岡県の太宰府天満宮の近く)、下野薬師寺(現栃木県で、道鏡が晩年をすごした所)、あともう一つが、東大寺戒壇院です。
重源の他、空海も最終的にはここで免許を与えられたという話も伝わっています。
全国には、無数の四天王像が存在しますが、東大寺戒壇院にある四天王像は古くからあり、塑像による迫力ある像となっています。国宝です。
奈良東大寺を訪れた際には、ぜひ戒壇院を訪れてみられたら、いかがでしょうか。
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