法楽寺と名のつくお寺は全国にたくさんありますが、今日、ご紹介するのは、大阪市東住吉区山坂にある法楽寺です。不動明王を中心にお祀りしてあることから、田辺不動尊、田辺のお不動さんとも呼ばれています(このあたりは田辺と呼ばれている地域です)。
このお寺に最も縁の深い人と言えば「日本の小釈迦」と呼ばれた慈雲尊者です。このお寺で得度(とくど)をされ、初めてこのお寺の住職となった人です。
伝承によれば、このお寺の開基は平清盛の長男である平重盛です。独裁的であった父清盛に対して、理性的であった重盛、時の最高権力者である後白河法皇と(その法皇に敵対する)実質的統治者である父清盛との間を取り持ち、平家の安泰に貢献した人物です。若くして病死しましたが、重盛が生きていたのなら、平家は滅亡せずにすんだと言われています。
その重盛が、どうしてこのお寺を建てたのでしょうか。
平家と源氏の戦いで亡くなった数多くの人を弔うためでした。仏教への信仰が篤く、それゆえ人と人とが敵対するのは無意味なことをよく理解していたからだと思います。この寺に安置されている如意輪観世音菩薩は源義朝の念持仏でした。
そういう重盛の願いが受け継がれているお寺と言えます。
このお寺、大阪府の人にでさえあまり知られていないのですが、なかなか立派なお寺です。さほど境内は広くないのですが、ご本尊の不動明王が祀られている本堂の他、三重塔、大師堂、樹齢800年の大楠(高さが26m・周りが8m)、稲荷社、それにアートハウス(リーブスギャラリー=小坂奇石記念館)などがあり、見応えのあるお寺です。
本堂には、ご本尊の不動明王の他、向かって左に歓喜天(十一面観音菩薩)、向かって右に釈迦如来、如意輪観音菩薩、地蔵菩薩が安置されています。お堂の中に入ってお参りすることができ、仏様に向き合っていますと、心が落ち着いてきます。
不動明王を強く信仰されている方や、関心の持たれた方は、ぜひ、お参りされてはいかがでしょうか。
<お寺データ> 法楽寺 JR阪和線「南田辺」駅より北東へ徒歩5分
近鉄南大阪線「田辺」駅より南西へ徒歩7分
場所:大阪市東住吉区山坂1-18-30
ご本尊:不動明王
1945(昭和20)年、このお寺の東側の地域(現田辺小学校)で、疑似原子爆弾が投下され多くの被害者が出た。核燃料こそ搭載していなかったものの、長崎原爆とほぼ同型の爆弾で、この形の爆弾がどのような弾道を辿るのかを調べるために落とされたのであった。法楽寺より東へ約140m行った所に恩楽寺があるが、このお寺の境内の中に疑似原子爆弾資料館がある。
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